ねりまの文化財を訪ねて=3=

ねりまの文化財を訪ねて

閻魔様(えんまさま)と檀拏幢(だんだとう)

ねりまの文化財を訪ねて=3=

 「ウソをつくと閻魔様に舌を抜かれる」と言われて、悪いことをすると罰が当たると教えられてきました。仏教の教義では、冥界(めいかい)の王である閻魔は、生前の善行悪行により審判をつかさどりますが、民間伝承では地獄で悪を裁く者として語られてきました。

 大泉町の教学院境内には、閻魔の審判の様子を説き明かす檀拏幢という珍しい石造物があります。教学院庫裏玄関前の、高さ約1m、二つの頭が作り彫りされている石塔が檀拏幢です。もともとは、南へ20m程のところに建つ閻魔・十王像と一組を成していたと考えられ、両石造物には共通して「元禄三庚午(1690)十一月善日橋戸村庄氏浄信 敬白」という銘が刻まれています。
 檀拏幢の竿状(さおじょう)の蓮台(れんだい)上の顔をよく観察すると、憤怒の男相と柔和な女相となっています。亡者が閻魔の前で審判を仰ぐとき、悪事により重罪であれば憤怒相の口が火を噴き、善行が勝れば柔和相から芳香が漂うとされています。閻魔はこれを見て罪の軽重を判定します。
 閻魔の信仰は中国で道教と習合して日本に伝わり、民間伝承されてきました。密教寺院に伝わる閻魔天像には、檀拏幢と同じ役割の檀拏杖(だんだじょう)を持つものもあり、仏教と民間伝承のかかわりが分ります。
 檀拏幢まで備わった閻魔・十王石像は、全国でも数少ないものです。一度訪れてみてはいかがでしょうか。

ねりまの文化財を訪ねて=3=

▽所在地 大泉町6-24-25 教学院内
▽問合せ 区役所内伝統文化係

平成10年7月11日号区報

写真上:閻魔王(中央)(令和4年)
写真中:檀拏幢(令和4年)
写真下:閻魔・十王像(右)と檀拏幢(左)(令和4年)