ねりまの文化財を訪ねて=14=

ねりまの文化財を訪ねて

響きわたる鐘の音

 皆さんは大みそかから元旦にかけて、どのように過ごされましたか。お寺では百八の煩悩を除くため、除夜の鐘がつかれます。今では毎年の民俗行事となっていますが、大みそかの夜にはどこからか鐘の音が響いてきて、年の暮れと新年を迎える雰囲気を感じる方も多いかと思います。

ねりまの文化財を訪ねて=14=

 区内の寺院にある梵鐘(ぼんしょう)のうち最も高く吊(つ)られているのが、南蔵院(中村1-15)の梵鐘です。赤く塗られた荘厳な二階建ての門の上階に吊られています。この「南蔵院鐘楼門」は、建築様式から江戸時代中ごろの建築と考えられており、区内では古い部類に入る建物です。本柱は4本で、柱間三間、出入り口は中央の一間なので三間一戸の建物となっています。桁行(けたゆき)6・8m、梁間(はりま)3・6mの入母屋造り・かわらぶきです。2階は吹き抜けで、回縁(まわりえん)が張り出し、四隅には擬宝珠(ぎぼうしゅ)が付いた欄干が回っています。楼門形式の建物は区内唯一のもので、赤く塗られているのは寺の格式の高さを示すものでもあります。
 現在は新しいものとなっていますが、元は正徳五年(1715)銘の梵鐘が吊られていました。昭和の初めごろまで、南蔵院の建つ一帯は、中新井川に向かって緩く傾斜する以外は平坦な土地で、田畑が広がっていました。高いところに吊られた梵鐘の鐘の音は遠くまで響きわたり、村の人々にさまざまな思いを抱かせたことでしょう。

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▽所在地 中村1-15
▽問合せ 区役所内伝統文化係

平成13年1月21日号区報
写真上:南蔵院鐘楼門(正面・平成30年)
写真下:南蔵院鐘楼門(裏側・平成30年)
◆区指定有形文化財になっている南蔵院鐘楼門(昭和63年度区登録・平成元年度区指定)内およびその周辺は、火気厳禁となっています。見学の際にはご注意ください。