ねりまの文化財を訪ねて=11=

ねりまの文化財を訪ねて

丸彫りの青面金剛庚申塔

 区内には130余りの庚申塔(こうしんとう)があります。石の表面に青面金剛像(しょうめんこんごうぞう)を彫ったものや「庚申塔」の文字だけを刻んだものなどさまざまです。中でも下石神井五丁目の7地先の路傍にあるものは、一本の石から丸彫りした珍しいものです。
 この庚申塔の高さは148㎝で、享保12年(1727)に伊保ヶ谷戸(いぼがいと・下石神井五丁目付近の旧字名)の講中の人たちによって建てられたものです。台座には邪鬼と「見ざる、聞かざる、言わざる」の三猿が浮き彫りにされ、憤怒の相をした青面金剛像が邪鬼を踏みつけています。三猿は青面金剛の使いを表しているといわれています。

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 中国大陸から伝わったと考えられる庚申信仰では、庚申の日、人の体内にいる三尸虫(さんしちゅう)が人体を抜け出して天帝にその人の悪事を告げると信じられています。庚申の日とは、十干の庚(かのえ)と十二支の申(さる)を組み合わせた日にちを表現したもので、60日ごとに巡ってきます。
 この日は庚申待ちといって三尸虫が身体から抜け出せないように、信仰する人たちは一晩中起きていなくてはなりません。江戸時代には、皆が集まって起きていようと講が結ばれました。酒宴などの行事も行われるようになり、庶民の間に信仰が広まりました。講中では、延命招福を祈るとともに、連帯を図るため、庚申塔が造立されました。現在でも、伊保ヶ谷戸の庚申講の人たちによって庚申待ちの行事が年に数回行われています。
 昭和40年ごろ、この庚申塔に自動車が衝突し、塔は二つに折れてしまいましたが、講と地域の人たちによって修復され、現在も大切にされています。皆さんも、地域の人々の庚申塔に対する思いを感じながら見学されてはいかがでしょうか。

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▽所在地 下石神井5-7-11
▽問合せ 区役所内伝統文化係

平成11年5月11日号区報

写真は、「丸彫青面金剛庚申塔」(令和4年 区登録有形民俗文化財・平成6年度登録)